浅井鐘の備忘録。

 将来の夢はスナフキン。  旅人ってジョブ、どうやったらクラスチェンジできるの?なんてことを真剣に考えてはっちゃけた人生を歩んだ気の毒な人の備忘録です。    保育園の先生→ホスト→老人介護。  その他、堅気からギリギリ、もしくはアウトのさまざまな職業を経験、または巻き込まれ……。  ふと気づけばいいお年。  忘れたいことから、忘れられないことまで備忘してみます。


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「異属はな、死なんのだよ」

「え……?」おもわず聞き返すと、こちらを見据える目にむかえられた。

 理解が追いつかないが、総督は話しを続けた。

「あれらは、それぞれの個体が許容以上の損傷を受けると活動を止め、およそ一昼夜で塵、もしくは泥となる」

「それは、死んだのでは……」

「そうだな、ふつうはこの現象を、異属の死だととらえている。だが違う」

「違うって、どう……」

「たいていの場合は一月、遅くても一年ほどでわれらの前に、まったく同じ個体が現れる」

「まさか……。そんな話、聞いたこと――」

 言いよどんでいると、笑い声が響いた。

「あったら大問題じゃな。圧倒的な戦力の差を、人間は技術と勇気を持って乗り越えてきた。ところが敵は不死身の化け物だったと。それを聞いて信じるものはおるまい。しかし、事実だと知れたら民は恐慌を起こし、国がくずれる」

 灰色の目にとまどったサヤを映して、総督は言った。

「とても、受け入れられんだろう。長きにわたって自分たちを脅かした脅威の正体がこれでは……。とてもやりきれん、そうだろう?」

「でも、わたし達、異属を見たことがないわけでも、戦ったことがないわけでもありません。たしかに恐ろしいですけど、そんな、おとぎ話みたいな」

「異属は、異属の森をはなれるほどに、まっとうな姿になっていく。かたちも、大きさも、生き物としての常識の範囲におさまっていく。ところで――そうか、外の異属を見たのなら理解が早かろう。どうであった。われらの敵は……似ていたじゃろう」

「……似ていたって」

「うんざりするほど人間に――」

サヤの肩がびくりと震えた。戦塵のすきまから、わずかに見えた姿が蘇った。

「あれが、……本当に異属なのですか? あれは、わたしたちが見てきたものとは、まるで違う」

「まあ、血管の化け物だと言う者もおったし、馬と蛇のミイラだと言った者もいた。とにかく、この砦ではあれを異属と呼ぶ。」

 平然と語る総督を、信じられない気持ちで見つめた。

「それらの異属の姿もふくめて、どうにか秘密としての体裁を保っていられるのは、この砦が、異属をいまのところ食い止めていること。事実を知る連合の一部の者たちが、砦の外の異属の被害を最小限に抑えられていること。この二点に尽きる。ああ、話がだいぶそれたな、戦の陣立てについてだったな」

 総督が目配せすると、マイラスがぶあつく綴じられた書類を差し出した。

「もともと、異属はこの砦を襲っているわけではない」

 紙の束がいくつか選りだされて、サヤの前に投げられた。

「そして、その先に侵攻しようとしているわけでもない。やつらは土地や家畜に欲があるわけではない。――ただ人間の命を欲している」

「命って、なぜ? 理由は」

「――ない。個体差もあるが、異属は一定の数の人間の命を奪うと、申し合わせたように森に引き上げていく。それまではこちらがいくら殲滅しても、バラバラに刻もうと粉々に打ち砕こうと際限なく発生し、人間を殺す。それだけの生き物だ」

「……そのための、方法が、まさか」

「犠牲を最小限に抑えるためには、そうと知りながら、戦士たちをやつらの眼前に送り、散らせるしかない。それができなければ砦は休みなく襲撃を受け、半年も持たずに大地は異属であふれかえる」

巻狩りの陣は――、総督はテーブルに指先で陣形を描いた。      

「つねに異属を包囲し、走り続ける。腹がいっぱいになった異属が引くときには、こちらも速やかに兵を下げられる。うまいやり方をしようと考えをめぐらすより、よほど被害がおさえられる。人間相手の戦ではないのだ」

 マイラスが別の書類を総督の前においた。

「もうじき、われらが塵節と呼ぶ災厄がやってくる。数千の異属が、陣形に似た動きでもって襲ってくるのだ。首領と呼ばれる特別な個体が指揮をとってな。……それに対抗するには、通常の十倍以上の兵力が必要になる。その時にそなえ兵力の損耗をおさえ、できる限りの装備をあたえ、そのすべてを動員して迎え撃つ」

「……みんなは、兵のみんなは、それで納得しているんですか」

 サヤは、うつむいたまま聞いた。

「機密中の機密と言ったじゃろう。当然、伝えていない。終始こちらが攻めているように見える巻狩りの陣が使われる理由はそこにある。……あるいは気づいている者もいるのだろうが」

「こっちが有利だとだまして、くじ引きをするみたいにみんなを殺すんですか」

「その通りだ、まだこの砦には時間が必要なのだ」

「時間? 時間があったらなんだっていうの⁉」

総督は目をつぶって、サヤがしずまるまでじっと待ってから口を開いた。

「……コウヤ様はわしに言われたのだ。この地に砦を築いて異属の侵入を防ぎ、独自に力を蓄えるとな。いつの日か、われらが異属を圧倒し、滅ぼすために必要なすべてをのこして生涯を終えられた」

「なぜ王国とはべつに? 力を合わせたほうが、もっといい方法がみつかるかも」

「独自に力をたくわえる。とはそういう意味ではない。世間でいわれるほどには、わしと王国は反目してはおらん。シーファはほぼすべて承知している」

「――閣下、サヤ・ノートの父は近衛兵団の……」

「かまわん、すべて話すと決めた。コウヤ様はこの砦の役割が、王国の政治に干渉され、利用されることを危惧されたのだ」

「それって、王国でいわれてる総督の悪いうわさって――」

「ほとんどは、わしの方から意図的にながしておる。いくらシーファが連合の首長だといっても、街道がもたらす富と、砦の兵力を一国が抱えることは、異属とはべつの火種を生みかねない。そこでゲン・ノートが、砦と王国を切りはなしておいて、裏では橋渡しをするという離れ業をやってのけたのだ」

「……それが、六十年前」

「わしが王国を狙っている、といううわさが立てば、他国からの不満や猜疑をそらすことができる。わしが私腹をこやして富をむさぼっている、といううわさが立てば、この地にいすわって兵を養っていることも、容易に異属の森に踏みこまない言いわけにもなる。おかげで、御前試合などという力を見せつけねばならない面倒もあるがな」

 総督はおどけるように言ったが、サヤは笑えなかった。

「……おまえが言ったように、わしは何も伝えないまま、わしを英雄と信じた者たちの命を奪った。そうまでするわしはもう、勇者などではあるまい。だが、汚名という泥などいくらでもかぶろう。わしはその泥のうえから、戦いに散った者たちの血をこの身に浴びているのだから……」

「グレン総督、わたしと、ラティエは……」

「ラティエ殿がなにを求め、どこに至るためにここに来られたかは、もはや問わん。ただ、これだけは言っておく。勇者とは、人間とは、生きれるだけ生きるのではない。生きなければならないだけ生きるのだ」

 


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「グレン閣下、異属の森の入り口に、二万五千の陣立てが整いました」

将校のひとりが前線からの報告を伝えた。グレンは、砦と異属の森のちょうど中間の位置に二日をかけて本陣を築いていた。

「しかし閣下、本当にこの位置でよろしいのですか」

こわばった顔で、ヤーズが口を開いた。

人よりも大きな地図が広げられて、その上には駒がならんでいる。ヤーズはそろそろと駒を動かした。

「さんざん交わした議論を、ここでまたわしに聞かせるつもりか?」

グレンがひと睨みするとヤーズは黙った。その場にいる将校たちに脅えは見えないが、それぞれがとまどいを抱えているのが見えた。

それもそのはずで、通常の砦の用兵は、異属を包みこむような巻狩りの陣形で戦う。そうやって異属が森に引き返すまで、異属の進軍を防ぎつつ周りを回りながら戦うのだ。それは兵法というよりは平地で行う山狩りだった。

それに対して塵節の戦いは、ぶ厚くならべた武器と兵のぶつかり合いである。

塵節では、異属が陣形に似た行動をとるので、巻狩りの陣ではすぐに破られてしまうのだ。壁のようにならんだ異属の群れの正面に、それを圧倒するほどの壁を人間でつくって迎え撃つ。それが砦に伝わる塵節の戦だった。苦い記憶だが、二か月前もそれで戦った。

しかし地図の上の駒は、そのどちらとも違う戦場をつくっていた。

駒は異属の森にふれるほどの位置で、八つの駒が二列、三日月がかさなるようにならんでいた。

「いいかね、諸君。報告によると森の中の異属が約五千、これでは壁を作ってもすぐに破られる。本陣をふくむ二万を足しても同じだ。前回は不測の事態がかさなったとはいえ、四千の異属に六万の壁をくわれたのだ」

二か月前の塵節は、六万の兵のうち七割を損耗するという悪夢を砦に刻んだ。

「われらがここを乗り切るには、森の入り口をふさいで異属が展開して陣形をつくる前に叩く。これしかない」

「……しかし、この形ではなにかあった時に、下がることもできなければ、部隊を入れ換えることもできません。せめて私の隊だけでも前に――」

「前線の皆をただ死なせはしない。そのための二つの奇襲部隊とこの本陣だ。奇襲部隊は、異属が森の入り口に押し出されるところを見はからって森に入りこみ、異属の首領を探しだしてこれを討つ。本陣はその機を待ち、一気に追撃をかけ異属を殲滅する。それまでは温存しなければならない。今回の塵節は、乗りきるだけではわれらの負けなのだ。なんとしても首領を討ち、数年の平穏が得られなければ砦は終わる」

 軍議でなんどもくり返されたやりとりだったが、苛烈な結果が目に見える作戦に、顔を伏せるものが何人かいた。

 グレンは、まだ若い将校たちに心の中で詫びた。だが声を張り上げ叱咤する。

「勇気をだせ! 恐れるな、われらは世界と脅威をわかつ壁なのだ!」

 

サヤとカー・ク・ルーは、マイラス・アナフターを隊長とする奇襲部隊二千として異属の森に向かっていた。前線部隊といっしょに砦を出て、途中でしずかに隊をはなれ、砦の東の河を異属の森に向かって下る。そして前線が配置される半日前には異属の森を見おろす丘のような場所に着いた。ここで開戦を待ち、森に入るタイミングをうかがうのだ。

まわりにいる仲間たちは選り抜きの精鋭ぞろいなので、真剣な空気ながらもどこか余裕があった。

そういえば――、サヤは思った。

自分は、異属との戦いはこれが初陣だったのだ。

サヤはグレンに噛みついたときのとのやりとりを思いだしていた。

 


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 北朝鮮がポンポンと弾道ミサイルをお空に飛ばしています。
 まわりの国からはさんざんに言われたり、嫌がらせを受けたりもしているはずなのですが、まったく勢いが止まずますます盛んです。

 なんだか、金持ちの子どもが、学校で禁止されている花火を駄菓子屋で買い集めて、ひそかに楽しんでいるような。
 
 無邪気と言えなくもない気がするけれども、やっぱり大半は寒々しい気持ちになりますね。

 さて、とはいうものの、日本海というきわめて小さな海を挟んで向かい合っている私たちとかの国。
 弾道ミサイルという単位で距離をはかるならば正に、指呼の間。といった感じです。
 子どものいたずら。とはいえ、その子どもがどうやら、「花火を人の家に向けて遊んでいるゾ」となれば黙ってられません。

 こういった場合は、ガツンと本人に言う。
 または親に連絡がいってへこまされる。
 良い友達ができて改心する。
 などの治療法が一般的だと思うのですがどうでしょう。

 ガツンと本人は言われたところでますます依怙地になっているので却下。
 親たる中国は、いままで庇いつつ、諭しつつ更生させようとしたようですが、どうやら最近はさじを投げた感がありますね。
 良い友達は……。たぶん、社会主義的な考えの友達しかできないと思うので、思想的な改心はないでしょう。
 ちなみに兄弟たる韓国も不摂生がたたって、頭を取り替えるという大手術が控えています。


 では構造が変わるとしたらどんな可能性があるのでしょう。

 1、朝鮮半島の統一。
 どうでしょう? 政治的に無理がありそうですが。
 韓国が主導となる場合は、おそらく韓国の考えでは、ゲリラ政権をつぶした。程度でしょうから、やっぱり首都とか行政とかでもめるでしょうね。そもそも財政を支えられないのでボツ。
 
 2、北朝鮮主導で統一。
 引き続き経済制裁で財政不安。
 たぶん韓国人を敵対階層にして内政不安。
 ないですね。

 ところで、ミサイルが飛んで来たら当然わが身を守らなければならないわけですが。
 われらが自衛隊はどうでしょう。
 
 GNPが二位のころからせっせと国防に努めていたので、防備には不安がないはずですが、いわゆる「戦争をしない軍隊」という矛盾のまま育った彼は果たしてどれほどの戦闘力があるのでしょうか。

 今書いたように、装備面では相当な優位を期待できます。沖縄と樺太を占領され、首都に空爆までされた経験があるので、防備にはけっこうな緊張感もあるはずです。
 では兵士の質は?

 徴兵制度の国と志願制の国の違いでざっくりと考えてみましょう。

 なんといっても徴兵制の兵士は鍛え方が違う感じがします。なにせ、どんだけ殴られても蹴られてもその理不尽さが国是なんですから、これは怖いです。二年満期でとっとと止めてしまう日本とは鍛え方がまるで違うでしょう。

 でも、自衛隊だって当の国民に、国のお荷物だ、無駄遣いだと言われながら、まさに設立以来ずっと戦闘状態だったわけです。
 忍耐にかけては人後に落ちることはないでしょう。また、その根性が現代に受け継がれているなら、回天や桜花に乗った狂気の血脈という感じがします。

 
 人類が何度滅んでも飛び続けるだけのミサイルが世界にはあります。

 いまは人類の叡智というものにすがるばかりです。