浅井鐘の備忘録。

 将来の夢はスナフキン。  旅人ってジョブ、どうやったらクラスチェンジできるの?なんてことを真剣に考えてはっちゃけた人生を歩んだ気の毒な人の備忘録です。    保育園の先生→ホスト→老人介護。  その他、堅気からギリギリ、もしくはアウトのさまざまな職業を経験、または巻き込まれ……。  ふと気づけばいいお年。  忘れたいことから、忘れられないことまで備忘してみます。


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目をうばわれつつもウルルクをはさむ位置に動く、その間にも距離はつまってサヤが槍をのばせば届くほどの位置に来ていた。

急に、サヤがゆっくりと動いたように見えた。からだをかがめたあと、とんとんと爪先で踊るように左がわを抜けた。ウルルクはだれもいない場所に鎌を振るい続けている。

 カーは息をのんだ。サヤはウルルクの背後に跳躍し、穂先を首に当てようとしている。

「――お見事、まるで雨の一しずくですわね」

 声と同時にウルルクの首がねじれながら上に伸び、サヤの横腹を食いちぎってふたたび空中に押し上げた。

 サヤは血の筋を残して、力なく地面に落ちた。ウルルクの伸びた首はみるみるもどり、かくんと元の場所におさまった。

「気配を、まるで感じませんでしたわ。本当に、一滴の雨つぶほどにしか。……人間、人間、ほんとうにうらやましい。なんて楽しそう。あなた方は、泣きながら生まれて、文句を言いながら生きて、失望しながら死ぬんでしょう。そんなにたくさんやることがあるのに、その間にあんなこともできるようになりますの?」

 口のはしにサヤの衣服のきれはしと、たっぷりの血をつけたままウルルクはいった。

「とても、すばらしいものを見せてもらったお礼に、ひとつ教えて差し上げます。わが家の庭の入り口のあなた方、そちらももう、全滅ですわ」

 サヤのからだは、ぴくりともうごかない。かまわずウルルクは言った。

「わたくしたちは、虫がはっているくらいでわざわざ壁をくずしたりはしませんわ、そうでしょう? あれは、あなた方のお相手をするためにつくった、新しい道ですの」

 

「グレン閣下、西に新たに現れた異属の群れですが、数はおよそ八百」

その報告で幕内に動揺が走った。

「西の断崖に地滑りが発生した模様です。崩れた山肌を次々と転げ落ちるように襲ってきた、と」

「馬鹿な! そのような不運や天災でわれらが崩されるなどと……」

 なげきとも、怒りともつかない空気が本陣を覆った。救援に向かうか、それとも撤退か。錯乱した中で意見が飛び交い、恐慌状態に陥りかけた将官たちを一喝する声があった。

「ラティエ殿は、西を渡っていた部隊に被害はあったのか」

「安否は未確認ですが、かなり局所的な地滑りのようです。進軍の状況によってはあるいは……」

その場の視線を一身に受けながら、グレンは静かに口を開いた。

「おそらく偶然ではあるまい。たしかに、雨が続いたわけでもないのに砦の井戸がにごったという報告があがっていた。信じがたいが、やつらは地下の水の手を操り、それを利用して崖を決壊させたのだ」

 無言で手早く図面上の駒を動かすと、そこには絶望的な戦況を描かれていった。

「――本陣を動かす」

 図面の中央の下、ひときわ大きな駒をぐいと動かしグレンはいった。

「本隊は、新たに現れた西の敵勢に対して縦に切り込む。その上で急襲を受けている部隊と連携し、新たに敵勢を囲む陣を形成する」

 しん、とした沈黙のあと、若い将校たちは口々に勇ましい言葉をかけあい、今にも陣幕を飛び出さんばかりになった。

 どんなに不利でも、理不尽と思える状況でも、異属に向かうと決まれば彼らはかならず目の色をかえて、われ先に命を投げ出そうとする。

この砦では勇敢で有能な者ほど異属に近い場所で戦うことになり、自然と将校の年齢も下がる。年若い分だけ真っ直ぐな若者たちに、恐れる様子は見えない。そして彼らをそうしたのは他ならぬ自分なのだ。

こんな時にいつもくじけそうになる心を奮い立たせてグレンは指示をする。

「突撃の後、右翼は森側の異属と先行部隊の間に入り、壁となって接敵している部隊を立て直す時間をかせげ。左翼は大きく西に回り込み、異属が自由に動ける範囲を削れ。ヤーズ、おまえは後方の部隊を指揮せよ。わしの本隊に続き、本隊が分断した敵勢をさらに散らして退路を確保しろ」

 そういって、本隊の駒のまわりに鳥の羽のように駒をひろげて置いた。

「閣下、……撤退を具申します。この戦いは断崖からの奇襲を読めなかった時点で、われらの負けです。奇襲部隊が成功しても、このまま戦場をみだしてはつぶし合いになります。ここは、どれだけの将兵を砦の内に連れ帰るかが肝要かと」

将校たちは、ヤーズの弱気とも取れる言葉に横目で蔑むような視線をぶつけそれぞれの陣をうごかすために行ってしまった。

「前線を引かせたところで、森側の異属にかませた蓋がはずれて全滅だ。より多くが生き残るには前線が生き続けることが絶対だ。それを守るための盾がどうしてもいる」

「しかし、それを救うために同じだけの損耗を出しては――。今回集めた五万は、失えばこの砦を失うことと同義です。どうかここは――」

 前線の二万以上の兵が異属に呑みこまれれば、今回の塵節はおそらく終わる。

限界以上の動員を決行した砦は壊滅状態だが、それでも本陣をふくむ精鋭はのこる。

「それでは周辺の国が黙ってはいまい。要ともいうべき塵節で大敗したとなれば、すぐにでも街道を切り取りにかかってくるだろう。われらの失策が、世界を乱しては本末転倒だ」

「そうかもしれません、しかし私たちを失えば、あっというまにこの地は六十年前に逆戻りだ、それをわかっていて手を出すようなまねは……」

「人はそこまで思い通りには動かんよ。コウヤ様にこの砦を預かって以来六十年。それだけの時間をかけてケリをつけれなかった。そのツケが回ってきたのだ」

 グレンは一枚の紙をひろげた。

 
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にほんブログ村    先日、裁判員に選出され、とある地裁に足を運ぶことになった私です。
 世間で裁判員だなんだと話題になりつつも、まさか、自分が選ばれることになるとは!?

 どうやらこれが、選ばれた皆さんの共通の感想であったようでした。
 かくいう私も同様で、20数名の候補者が集められた控室では、緊張しつつも「まさか、俺がえらばれねえだろ」と余裕をかましておりました。
 
 万が一選ばれた時には、反社会的なジョークを連発しつつケツをまくってやろうなどと考えていたわけです。

 さて、この裁判員制度。まずはどのようにしてわが身に降りかかるかを備忘していきたいと思います。

 まずは、裁判所から手紙が届きます。

 このお手紙を、郵便局のおじさんが「○○裁判所からになります。浅井さんご本人ですか?」と来ます。    
 これは本人以外は受け取れず、ハンコかサインを求められるタイプの郵便で、はっきり言ってかなりビビります。
 思わず、ここ数か月から数年の自分の悪事なんかが走馬灯となって流れます。

 おそるおそる「はい、浅井です」と震える手でサインをし、嫌な汗をぬぐいつつ封を開けると、

 「あんたが裁判員に選ばれたので、同封の色々に記入して送り返してね!絶対返送しないと、ヤバいことになるよ!」というようなことが書かれた紙がひらりと落ちるわけです。

 その記入の内容ですが、要はやりますか? やりませんか? といったアンケートなのですが、ハッキリ言ってひどい内容です。

 やります と答えればそこでアンケートは終了。何日に抽選するから○○地裁に来てね!
 となります。

 ここで、普通の大人の人は、とうぜん仕事があるわけなので、たいていは、やりませんにチェックを入れたくなるのですが、その後がえげつない。

 約5ページほどにわたってできない理由を、微に入り細に至るまで記入せねばなりません。
自身の会社内での立場や、自分が
いなくなることで、具体的にどれほどの金額の損失があるのか? なんてことを書く項目まであります。


「……し、る、か!(怒)」

 
 ここで心を折られて、選出されたというよりは、出頭する感じで私は地裁に向かうわけです。

 ちなみに、お手紙は、出頭の3か月前くらいに届きました。

 先に書きましたが、当日は私の場合は、20数名から6名プラス予備の人員2名が選ばれました。

 選ばれた我々はその後1~3週間ほど裁判のために身柄を押さえれることになります。日給は八千円。交通費支給。昼飯は自腹です。

 結果から言うと、私は、参加したものの、判決を待たずにクビになりました。

 そのことについては、いずれまた備忘したいと思います。
















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跳躍していっきに距離をつめると、ウルルクの顔が目前だった。

眉間に目がけて槍を突く。あとは肩をひねるだけで刃が届く。そう思ったが体が勝手に動いて体勢をそらした。

弓なりにそらした体のへそのしたから、くんっと上をむいたのどまで一直線に冷気が通り抜ける。下から鎌がふられたのだ。

槍を引く力を利用して空中で体勢を整えようとするが、振りあげられた鎌がそのまま断頭台のように落ちてくる。あっ、と思う間もなかったが、横合いから何かがぶつかって来て地面にころがされた。ころがりながら殺気を感じる方向に体を起こした。

「おまえぇッ、ラティエになんかしたらぶっ殺すぞッ」

「おい馬鹿、おちつけ、こっち見ろ」

 体当たりして助けてくれたのも、その声がカーであることもわかっていたが、怒りで意識から切りはなされた体は止まらない。

「発破をかけたつもりが、きき過ぎましたかしら?」

 その声に、ふたたび怒りが頂点に達して飛びかかろうとしたが、カーの長い腕がまきついて動きを止められた。

「はなして、カーッ! マイラスッ! ラティエくんのところにッ、いますぐこいつを片づけてわたし、ラティエくんのところに行かなきゃ!」

「おちつけサヤ、どのみちこいつを片づけなければ私たちも森から出れん」

 平静をとりもどした口調のマイラスが言った。

「奇襲部隊の目的には、異属の王も目的に含まれていたが、本線は首領を討つことだったからな。こいつをかたづけて、とっとと本隊にむかえに来てもらうとしよう」

「おう、ぼっちゃんの方にもおんなじ種類の化け物がいるんなら、なおさらここで頭数をへらさねえとな。サヤ、きっちり仕事しろ」

 ぱんっ、と派手な音がして尻をたたかれた。跳ね上がった体から、はりつめていた力がぬけた。

「……ごめんなさい、わたしがチャンスをつぶした」

「よし、とっととやっちまうぜ、行くぞ」

そういって、かまえようとするカーの前に手をだして止めた。

「――待って、わたしがやる」

「サヤ! 言っただろう、いくらあせっても結局はこいつを――」

「わかってる、だからわたしが行く、おみまいしてやる」

 ふたりとも動かないで――、それだけいって、すたすたと距離を詰める。

 空中で視線がぶつかり、威圧感が突風のように迫ってくるが歩調は乱れない。

「かわいそうに、わが家の庭を出たところで、あなた方は……」

肩先に刃が走ってきた。紙一重でかわすが、その反対、さらにもう一撃と、あっというまにウルルクとサヤの間には風を巻く刃の壁ができた。

「もうだまってて。わかるでしょう、急いでるのよ」

 

 カーはしばらくのあいだ、サヤとウルルクに見入っていた。

かりにも敵地のどまんなかで、動かないで、とはあんまりだが、本当にしばらくうごかずにいた。マイラスも自分と同じようにつったっている。

実際、手が出せなかった。サヤが、体や髪をかすめるほどのぎりぎりのかわし方をするのでうかつに手を出せないのだ。

「なんなんだよ、サヤ、おまえ……ここまで」

 風を切る音がどんどん激しく、早くなっていくが、サヤは体をひねり、かたむけてかわし続けている。右手の槍は体の前にすら出ていない。

そのうちに、おかしなことに気づいた。

「サヤがこの後、どう動くかわからんから後ろはダメだ。カー、左右にまわるぞ」

 いつのまにか下がってきたマイラスが耳打ちして、ウルルクの左右をさした。

「あ、ああ、わかった。だが……あれを、説明できるか」

攻撃が激しくなるにつれて、サヤは、なんと前に進みはじめていた。すこしずつだが距離が縮まっている。しかし、おかしなところはそれだけではなかった。

「サヤの見切りの早さと、体の速度があいつをはるかに超えているんだろう、だからあんな風に見える」

カーは目をこらした。さきほどから、サヤが体をひねりかわしたそのあとを、ウルルクの鎌がわざと遅れて通っていくように見える。相手が化け物でなければ、演武を見ているようだった。